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作物にも人間にもストレスを与えない食材を生産する

坂下オリジナルの床土は、鶏糞の脱臭と鶏舎の保温を兼ね備えてた、フカフカな土。

プリントしたレモンイエローの黄身の卵かけご飯は、ほっぺがおちるよう。

試行錯誤しながら独自の農法を生み出す

　「これからの時代は農業が求められる」と、自宅のベランダでブルーベリーを栽培していたことがきっかけとなり脱サラ就農した「楽農舎なごみの里観光農園」代表の坂下道良さん。農業ができる土地を求め6年前に高島市に移住し「多くの方に安心安全で作物本来の味を提供したい。収穫する楽しさを知ってほしい」と観光農園を開業した。
　「農薬や化学肥料を使うと、作物にストレスを与えてしまう。そして、それを口にする人間にも影響する」と、作物にも人間にもストレスを与えない栽培方法に重点を置く坂下さん。「農業は、その土地の気候・土・水で、何ができるか分からない。人に教わると応用がきかなくなるから、自分自身で試すしかない」という理由から、鶏糞や生ごみをEM菌で発酵させた「ぼかし肥料」などを使い、防虫には害虫を寄せ付けないコンパニオンプランツ（共栄作物）を活用するなど、農薬や化学肥料を一切使用しない独自の循環型農法で農業を展開する。そうすることで、「ナスビはリンゴの味。ニンジンは柿の味」といった、作物が本来持っている味を引き出す。

レモンイエローの純国産卵

　鶏の卵や鶏肉の90％を外国産の鶏種に頼っている日本。「輸入先の鶏に頼っていたら、疫病などが流行した場合、ひなが日本に輸入されなくなる。卵や鶏肉が日本で食せなくなる可能性が出てくる」と危惧する坂下さんは、純国産の鶏「後藤もみじ」（岐阜県）と「岡崎おうはん」（長野県）を約800羽平飼で飼育し、卵や鶏肉を販売する。
　この2種も、坂下さん独自の手法で手塩にかけて飼育。飼育小屋には、おがくず・籾殻・木くずなどを混ぜ合わせたものを敷き詰めて、暖かく鶏糞のアンモニア臭を脱臭する効果を兼ね備えた環境を作りあげている。また、鶏の主食には、地元の精米所などから出るヌカ・くず米・地元の豆腐屋のおから・小松菜の外葉など、捨てられていた地元の「もったいない自然資源」を有効的に活用する。さらに、雄も一緒に飼育しているため、卵はすべて有精卵である。そうした環境で育つ鶏からは、プリンとした弾力、クセや雑味がない甘くて濃厚な卵本来のレモンイエローの黄身が産まれる。
　産みたて新鮮卵は、同農園や道の駅などで売られ、この卵を求め販売所に多くのファンが足を運んでいる。また、高島市物産振興会が商品化した「究極の卵かけご飯セット」の卵にも選ばれ、ご飯と相性のいい「究極の卵」としても人気だ。

スローライフをキーワードに

　「日本の食生活が豊かになることで様々な弊害が起きている。そのことを考え安心安全の作物を栽培し、それを分かってくれる人に食べてもらいたい」と話す坂下さん。農園に訪れるお客さんと交流しながら、障がいがある人たちや近所の人にも、畑でのんびり、ゆっくりしてもらう農園を目指し、安心安全な生産物を提供する。